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青幻舎 ビジュアル書を核に人の営みを照射

2011.09.23 

 青幻舎は、平成七年(一九九五)年に京都で呱々の声をあげている。
地価や株価が右肩上がりだったバブル時代の崩壊直後、きびしい状況下にスタートしているが、創業者安田英樹の志は社名に熾烈だった。
 すなわち、青幻舎の「青」に「純粋にして天空のごとく」「幻」に「まだ見ぬ夢を追い求める」「舎」に「学ぶ」というイメージを、仮託したのである。
 『青幻舎出版目録』の扉に掲げられたマニフェストに、それは具体的に公表されている。

 当代の芸術の存在感を顕す
 アート、デザイン、写真、絵画など、
 ビジュアル書を核としつつ、
 文学や評論へも出版分野は広がる。
 表現形態を問わず
 人の営みを内面から照射し得るような作品を手がけたい。

 このマニフェストは、青幻舎の嚆矢となる正B4判、特製布貼装上製本、総ページ三百五十二頁、定価五万円の『匠技 ―大工中村外二の仕事』に具象化された。
 取締役営業部長田中壮介は次の通りに言う。「当代随一の名匠による数奇屋建築を集大成した豪華本でした。70年万博日本庭園や伊勢神宮内の茶室をはじめ、ニューヨークのロックフェラー邸、インド日本大使館内の茶室等、日本文化の枠を集めて、〝数奇の心〟を余すところなく表現したものでした。『匠技』は、その年の造本装幀コンクールで通産大臣賞を受賞、翌年の『世界で最も美しい本展』では、わが国でただ一冊、優秀賞の栄誉に輝きました」
 青幻舎の処女本が、造本、装丁コンクールの賞を受ける幸運があって、ビジュアル書の礎は早くも固まった。
 建築、写真、アート、デザイン、絵画、写真集などのシリーズが順次派生していくが、若い読者層の共感を得て、ロングセラー化するものが少なくなかった。
 その流れの一冊、佐内正史の写真集『生きている』は、九七年に刊行されたが、今日までに四刷で一万部を超えるロングセラーになっている。
 他に話題となった衝撃写真集に、写真家・細江英公による伝説の写真集『鎌鼬』の完全復刻版。最高峰の報道写真集団69名の代表作品を集大成した超大型豪華版の『MAGNUM MAGNUM』や『マリオ・ジャコメッリ写真集』など、画期的な写真の精粋が目白押しである。
 目下ヒット中の『北斎漫画全3巻BOX』は、江戸末期の天才・葛飾北斎の漫画全15編を『江戸百態』『森羅万象』『奇想天外』の文庫サイズ三巻に再編集したハンディ版である。
 国際ブックフェアで四日間に二百BOXの売れ足を記録。三巻セットで三万五千部の好調さ。
 定価も手ごろな『青幻舎ビジュアル文庫シリーズ』は、懐かしのデザイン、陶芸、和のデザイン、色彩、テキスタイル、江戸の粋など四十五種刊行されているが、売れ行きは延べ百万部に達する勢いである。

 出版開発の企画力が光ったケースだが『パラパラブックス』と名づけ、パラパラとページをめくれば、短編アニメーションが立ちあがってくるフリップブックシリーズは、見事なアイデアの勝利だった。
 『客の多い穴』『めからかいこうせん』『ばくだんむし』等と八種類が刊行されていて、いずれも重版続きで延べ部数十五万部(実売)となっている。
 今年のクリスマスには、新たな装置を加えて、読者をあっと驚かせる新企画を準備中!と田中は自信を覗かせる。
 今夏、業務拡張のため、神田神保町に拠点を移し名称を東京支社に改称した。従来の営業に加えて、企画、編集スタッフを増員、さらにバージョンアップされた刊行物を生み出していくだろう。
(文中敬称略)(しおざわ・みのぶ氏=出版評論家)

週刊読書人 ―2011/9/23掲載

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