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文芸・評論(文芸・評論・随筆・ノンフィクション)

インタビュー 安東孝一編

アート・建築・デザインの分野で最も注目される各6名の歴史的なロングインタビュー。無から有が生まれる瞬間、言葉と形の間に深く迫る。ポートレート及び作品写真を収録する質・量ともに迫力の一冊。

アート / 舟越桂・森村泰昌・宮島達男・杉本博司・岡崎乾二郎・辰野登恵子
建築 / 青木淳・隈研吾・坂茂・妹島和世・内藤廣・岸和郎
デザイン / 葛西薫・浅原重明・内原智史・田山淳朗・水谷壮市・宮城俊作

アートディレクション 北川一成

http://www.andogallery.co.jp/

インタビュー 安東孝一編

□ 判型:A5判
□ 総頁:356頁
□ 上製
□ ISBN 4-916094-84-0

定価:1,800円+消費税
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書 評

アートの舟越桂、森村泰昌、宮島達男、杉本博司……、建築の青木淳、隈研吾、妹島和世……、デザインの葛西薫、浅原重明、田山淳朗など、いずれも国際的な活躍で知られる人たち。それだけでもその創作への思考は興味を呼ぶ人ばかり18名へのインタビュー集。聞きては、アンドーギャラリーの代表であり、プロデューサーとして長年活躍してきた安東孝一さん。これまでも『NEW BLOOD』や『くうかん』『Graphic』といったアート・建築・デザインの分野の優れた人たちの仕事を、ビジュアルだけでなくインタビューも交えた形式で紹介する本をいくつか著してきている。今回は、「無から有が生まれる瞬間、言葉と形の間を探る」をテーマにインタビューしている。

優れたものを作る人にとって、いままでにない新しいものを作り出すには、歴史の認識と自己批評は欠かせないものだが、そうした行為は創作作業の裏側にあって表に出てこないことが多い。ところが、このインタビューでは、しばしば、安東さんが投げかけるわずかな言葉に反応して、それが表に浮かび上がってくる。たとえば、葛西薫さんへのインタビューでは、言葉と形のデザインという質問に対して、葛西さんが言葉についてを話していくうちに、徐々に、言葉というよりも、形としての文字に興味があった話へと進み、デザインにおける文字のデザイン、タイポグラフィーの重要性へと話が深まっていく。クリエイターが自分の仕事を分析しつつ、それを言葉へと置き換えるための思考の変化が、ここでは手にとるように見えてくるライブ感覚溢れる会話になっている。

また356ページにも及ぶ分厚い大著でありながら、軽い紙を使用して、持ち歩いて読むのにも適したデザインは、北川一成さんによるもの。本作り全体が、言葉と形の新しい展開を感じさせてくれる。

― 柳 喜悦(PROGETTO運営)
木楽舎刊『ソトコト』2005年4月号連載『PROGETTO SELECTION』より転載
※文章を許可無く転載する事を禁止します。

やはり、なぜ安東孝一は問うのだろうか?

副題に「なぜ安東孝一は問うのか?」とある。ということは、この本はインタビューの内容を通して、インタビュアー自身の考え方を現す本のようだ。インタビューでは、淡々とした質問が繰り返され、抑揚のなさが特徴となっている。さて、これをどう読み取ればいいのだろうか。
その前に本というものは総合的な表現だから、中身以外の部分に目を向けてみよう。
まず目次。淡々としている。インタビュアーの配列はあいうえお順で、最も意図が見えない方法が採用されている。写真はトリミングとレイアウトの美しさが目を引くが、縦横アングルの組み合わせもあれば、似たようなアングルを隣り合わせるといったように、18人それぞれのレイアウトが全部違う。これもまたできるだけ作為的であることを避けているようなランダムさを感じる。
次に装丁。ぶ厚いハードカバーのわりにとても軽い。一枚一枚が少し厚く、そして軽い紙なのであろう。かなり不思議な持ち心地で、最初に手にとったときにおやっと思う読者が多いはずだ。この微妙なズレは結構意味深で、その本が重要であってほしいと思っているのか、そうではなく気軽に読んでほしい本なのか、判断を宙吊りにする効果がある。インタビュアー自身のあとがきも、かなり淡泊。黒地に赤文字という、かなり重い感じのグラフィック処理がされた「なぜ安東孝一は問うのか?」というメッセージの回答を期待すると、肩すかしを食らう。と、いろいろな角度からなめまわしてみると、全体が断定を回避しているようなつくりになっている。
インタビュアーとしての作家はいろいろなタイプの方が集められていて、普段あまり注目していない人も混じっているな、と多くの読者が感じるような設定になっている。なので、インタビューの回答は「つくる」ことだけが共通していて、ある作家は金型の話をしているし、またある作家は概念の話をしているというように、「つくる」の水面下にある、数え切れない種類の問題をさまざまな角度から照射する。その多様性は見ものだ、面白い。そして、そうした問題があまりにも多様であることが、この本で一番表現されるべき内容だったのだと考えてみれば、この本のつくりに納得し始める。
「つくる」とは一体何なのか、なぜ「つくる」のか、どのように「つくる」のか、安東さんは「つくらない」立場から執拗に問いつめ、結果、現れてきた多様性を損なうことなく一冊の本にまとめるために、本そのもののメッセージ性をかき消すことが意図的に採用されているのかもしれない。インタビューテキスト以外から読み取ることができるこの本の特徴は、すべてがそうした多様性の保存のために向かっている。
そう考えると、かなり意図的につくられた本なのだと納得することができるし、また質問の単調さも理解できるようになる。ただし、なぜインタビュー形式でないとだめなのか、人選の意図は何かという疑問は残る。インタビュアーに「憑き物落とし」的な納得があり、わかった喜びとそれを他人に教えたいという単純な動機が見えるようなものであればわかりやすいのだが、インタビュアーは結局、これらインタビューに満足したのだろうか?納得したのか、そうでなかったか。そうしたインタビュアーの気持ちが知りたいのだが、残念ながら読み取れない。あとがきの、今後は言葉が大切だから作家に聞いてきた、というのは一応の回答ではあるが、自分の意見を出さないことへの回答ではない。そこだけが謎だ。私は副題にこだわり過ぎているのだろうか?

― 乾久美子(建築家・乾久美子建築設計事務所主宰)
「建築技術」2005年6月号掲載、「ザ・ブックス」より転載。
※文章を許可無く転載する事を禁止します。

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