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奥村土牛という作家は雅号からも何となく鈍な作家と思われがちでる。
しかし実際は写生を極めセザンヌに学び造形としての絵画を追求した
理知の人である。近代作家というよりも現代作家の嚆矢と位置付けてよい
作家である。(中略)
土牛は小林古径という新古典主義の作家に兄事したから最初のうちこそ
線描主体の気品ある作品を描いた。しかし古径の亡くなる直前からは
俄然作風を変えていった。
線を捨てもっと自由で大らかな作風へと変化していった。
そこに土牛の本領は発揮され「鳴門」「醍醐」「吉野」等の名作が誕生した。
私の好きな「僧」は興福寺の釈迦十大弟子を描いたもの。
この作品を見るたびに岸田劉生が東洋画を賞して語った「偉大なる間抜け」
という言葉を思い出す。全て描き込んでしまわないほうが作品を雄弁にする
という意味である。実に正確な写生の後に「僧」は描かれたのである。
「芸術に完成はありえない。要はどこまで大きく未完で終わるかである。」
土牛はこんな素晴らしい言葉を残している。
草薙奈津子(平塚市美術館館長・美術評論家)-序文より抜粋-