川内倫子 照度 あめつち 影を見る
広大な宇宙のなかの、そのうちのひとつの星の地の上で、
はじまりについて思いを馳せる。
地は天を移す鏡。鏡を写す写真。天と地をつなぐもの。
闇が底をつくと光がやってくる。
私的な日常風景を切り取り、つなぎ合わせ、普遍的な生命の輝きへと昇華させる写真表現によって同時代の高い評価を獲得してきた川内倫子。特定の時間や場所を記録する写真の束縛から解き放たれた瞬間瞬間の光景には、光と闇、生と死、現在と過去が交錯し、容易に言葉に置き換えることのできないイメージの純粋さは、見る者のさまざまな記憶や感情を呼び起こします。
新作シリーズ《あめつち》《影を見る》では、地球上の数々の事象を通して、作家の感覚と直感は、より大きな世界へと向けられていきます。
本書では、新作2作のほかに2011年に発表した近作《Illuminance》、イケムラレイコ(アーティスト)、鶴岡真弓(多摩美術大学芸術人類学研究所所長)との対談や、インタビューを収録。
また、特別にりんこ日記2012Ver.と、2009年にgallery trax(山梨)で1ヶ月だけ展示された小冊子も収録。
木村伊兵衛写真賞を受賞してから10年、節目を迎える川内倫子とその作品に迫ります。
東京都写真美術館にて開催される初の大規模個展の展覧会カタログとして出版します。
ブックデザイン
葛西薫、増田豊(サン・アド)
展覧会情報
川内倫子展 照度 あめつち 影を見る
会期:5月12日(土)― 7月16日(月・祝)
会場:東京都写真美術館
http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-1593.html
書 評
第29回写真の町東川賞 国内作家賞―2013/5/10
http://photo-town.jp/2013higashikawa-prize-exhibition/index.html
朝日新聞「視線」―2012/6/3
宮澤賢治なら「ほんたうのひかり」と呼んだかもしれない、そんな光に満ちあふれている写真集だ。 本書を手にとった読者を迎えるのは、阿蘇の野焼きの光景である。 人の手によって生み出された炎が、一帯の枯れ草を焼き尽くし、結果、自然が発生する。 そうした関係があればこそ、野焼きの炎は、時におどろおどろしく時に神々しい光を解き放つ。 少し進むと、星空が写されていて、なぜかそこには赤い軌跡が描かれている。 どうして空に線が?と思った矢先、星の輪郭の鈍いことに気がつき、これはプラネタリウムの写真だとわかる。となると、この「星空」の写真は「嘘」なのだろうか。違う。それは写真である限りにおいて、確かにそこにあった現実を、つまりは光を写しているはずだ。野焼きがそうであるように、自然と人工とを、本当と嘘を峻別することにあまり意味はない。むしろその「間」を考え、生みだしてきた人間の営みこそが重要なのだ。
本書に収められた「自己の闇が他者への光になることも」という川内の言葉は、
「ほんたうのひかり」を探し、生みだしてきた写真家ならではのものだ。
(保坂健二朗 掲載記事より抜粋)
産経新聞 読書面―2012/6/2
人気写真家・川内倫子氏の新作「あめつち」を収録している。 タイトルにある「照度」は、前作「Iluminance」の和訳。 「影を見る」はビデオ作品だ。新旧入り交じる構成は、東京都写真美術館で7月16日まで開催されている個展の関連書籍として出版されたから。 ただ、カタログという感じではない。 自作を「写真集として見せることがいつも念頭にある」という写真家らしく、余白や見開きを効果的に使い、サイズや紙質の違う紙を挿入するなど、趣向を凝らす。コンタクトプリント(ベタ焼き)で構成したページも万華鏡めいて面白い。 一冊の書籍として十分に楽しめる。(存)
(掲載誌より抜粋)

