青幻舎マガジン

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

京都/拠点 : work & life in Kyoto
vol.15

人と花を結ぶ「美」が見る者の感性を動かす。
アーティスト 花結い師 TAKAYA

 

 大胆かつ繊細に、花を扱うその人は、とても大らかで濃やか。それは、5年前に初めて会ったときから変わらぬ印象だ。そのときは、惜しまれながら廃刊した京都の情報誌に掲載するインタビュー記事のため、ウエディングのヘッドドレスを中心に紹介した。すっかりご無沙汰している中、昨年末に作品集が発売したことを知り、もう一度話を聴いてみたいと思った。本を出したことで何か変わったのか、それともやはり変わらぬままなのか。花に魅せられた彼がいま、どんなことを考えて、今後どうなっていくのか。少し離れたところから見届けたい、と思う気持ちと、ぐぐっと中まで入り込んで根掘り葉掘り探ってみたいという思いの両方を抱えて、いざアトリエへ。丁寧な手付きでお茶を淹れてくれた彼から溢れる花への敬愛さは少しも変わらず、けれど、より力強い生命力を感じながら、「花結い師」の解体に挑んできた。

text:山田涼子(椿屋)

花の一問一答!

花結い師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya


Q 1.生まれて初めて買った花は?

A 1.小学6年生のときに、サーモンピンクのフレンチチューリップを。その色に魅せられて、大阪に行ったときに探して1本だけ買って来ました。部屋に飾った瞬間、空気が流れたのを覚えています。

Q 2.初めてプレゼントした花は?
A 2.15歳のときにワインレッドのバラを贈りました。深い赤はそれからずっと好きな色で、気づけば小物もその色が多いですね。アトリエの壁も赤く塗ったほどでした。

Q 3.苦手な花は?
A 3.いっぱいあるけど…スターチスかな。理由は、臭いから(笑)。

Q 4.育ててみたい花は?
A 4.ないです。あんまり育てられない人かも?(笑) 色やデザインに惹かれるのであって、愛でるという感覚はあまりないんですよ。だから、花について訊かれたら本当に困ります。

Q 5.この先、ひとつの花しか使えないとしたら?
A 5.ダリアですね。華やかでカタチも可愛い。「ダリアのTAKAYA」と呼ばれたいくらい好きです(笑)。だからこそ、国産の中で日本一だと言っても過言ではない片山さんのダリアしか使いません。片山さんが育てるダリアは、茎がしっかりとしていて生命力が豊かで素晴らしい。

Q 6.花材として表現しやすい色は?
A 6.去年からはブルー期間ですね。年末に出版した「和婚のヘッドドレス 生花でつくる花嫁の髪飾り」(誠文堂新光社)も、カバーを取ったらブルーなんですよ。

Q 7.最愛の人に贈るなら?
A 7.愛しい人には贈りませんね。花は空気を変える力を持っているからこそ、弱ってる人にこそ贈りたい。花にはこだわりがないんです。花屋に行って、そのとき力のある花を選びます。相手に合う花、イメージする色で選べばいいと思います。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

白無垢、色打掛等着物に合わせる生花の髪飾り“ヘッドドレス”。花結い師TAKAYAの独創的なヘッドドレスをまとめた1冊。神社など和の空間に限らず、チャペルのある結婚式場やゲストハウスなど洋のシーンでも、白無垢や色打掛、引き振袖など和装を採り入れたウェディングは「和婚」という名で定着し、多くの花嫁が着物だけでなくドレスを着用することから、日本髪ではなく洋髪に生花をあしらい、さらにブーケを採り入れるパターンが定番スタイルになりつつある。そんな「和婚」用の生花の髪飾り“ヘッドドレス”の事例を豊富に紹介している本書。花結い師TAKAYAの作例を美しい写真で紹介し、コンセプトやテクニック、過去の作品の数々についても詳しく解説されている。

これこそが、己の道

 初めて花結いをしたのは、約10年前。何の前触れもなく、不意に、抑え切れないほどの衝動に駆られた。思いついたアイデアを具現化したい――。向かった先は、京都御苑。ゲリラ撮影だった。知り合いの女性にモデルを頼み、紫のチャックワンブルーを頭にあしらった。髪飾りとしてではなく、頭全体に。足元の枯葉から身体に沿って若くなっていき、頭上で花が咲くイメージだ。それが手から涌いてくるような感覚。さして時間もかけずに作り上げた。カメラに収めながら、確信していた。「これが、自分のこれから進むべき道だ」と。そのためには、パリコレに出なければ。だったら、できるかぎり早く仕上げられるようにならなければ。最初の作品づくりで、そこまで考えたのだ。

花結い師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya 花結い師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

表情と花々との競演。お互いの美しさを損なわないよう、絶妙なバランスで作り上げられている。

 「あ、これしなあかんねやな」
 手が勝手に動く中で、直感したという。逆に、手が止まったら「してはいけないこと」なのだと。迷いがないから、彼の制作時間は驚くほど短い。それを、彼は「花が吸い付いていくような感じ」だと表現する。だが、頭にこだわる理由は判らないらしい。面白い。本能に従って、人と花を結んでいく。

 彼の初期の作品は、モデルの表情も印象的だ。顔に合わせて花の種類や色を選び、結ってきた。「笑ってください」なんて愚の依頼はしない。最も綺麗なラインを探して写真を撮る。人だけ、花だけをフォーカスするのではなく、両者のバランスをきちんと写し出すことが大事だ。しかし、2年ほど前から表情はなくてもいいと思うようになった。そこからの作品は、あえて顔を覆うように花がアレンジされている。花だけではない。葉や枝だけ、野菜、果ては昆布や生姜など。結えるものは何でも材料にしてしまう。さらに、いま使ってみたいのは盆栽なんだとか。「根っこブームのときから気になってて…(苦笑)」。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya 花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

鼻筋や唇、顎や肩のラインが花を引き立てている。ほんの少し見える部分へのこだわりが伺える。

 それなのに、やはり人でないと成立しないのか? この問いは即答で肯定された。大切なのは、存在感とラインなのだと。彼が生み出す花結いは、どれもとてもインパクトが大きい。だが、それが花瓶に活けられていたら? 花籠に盛られていたら? ここまで大きな衝撃を見る者に与えるだろうか。答えは、否だ。やはり人と結びつけたところに独自のスタイルがある。シャープな輪郭、色気ある首筋、なだらかな肩のライン、美しい鎖骨……。それらと相まってこそ、花は十二分の魅力を発するようになる。だから、彼はモデル選びにも妥協がない。ただ造作がいいだけでなく、彼の選定基準はその内面にまで及ぶ。自分を知っていること、芯があること、所作の美しさ、味があるかどうか。同じだけ、フォトグラファーやデザイナーにも条件が課せられる。アンテナの感度のいい人、バランス感覚に長けた人。波長のリンクが合う人。

 「最終的には人だと思っています」と、TAKAYAさんは言う。アーティストらしからぬ発言だと思うかもしれないが、いくらいいものを創っていたとしても、選ぶ理由は「その人自身がいい人であること」というルールは揺るがない。一緒にモノづくりをするということは、人ありきだから。とくに、昨年末に発売した著書の制作では、当初決まっていたメンバーを一新したほどだ。イメージを伝えて、それをひとつのカタチにする。その工程で、必要なのはコミュニケーションと分かち合えるセンスなのだ。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

花以外でも面白いと思ったものは何でも結ってしまう大胆さもTAKAYA作品の魅力のひとつ。

「花結い師」をもっと知ってほしい。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

モデルはコンテンポラリーダンサーとして活動する木村英一氏。
指先まで意識された佇まいに、鍛えられた肉体美が陰影をもって浮き彫りにされる。

 ウエディング業界での活躍と並行して、長年続けているパフォーマンス活動。最初は、「花結い師」という存在をしってもらうための宣伝広報だった。知り合いを50人ほど集めて全員に花を結っていくというイベントで、デザインと音楽と光で創り出す総合的な「美」にそそられた。その場のインスピレーションがぶつかり合う即興の凄さを体感する。会場選びから当日のパフォーマンスまで、トータル的な演出の面白さが、アーティストであることの醍醐味のひとつでもあるのだろう。

 数年前、日本フラワー協会の講演会で、津軽三味線のメロディーに乗せてカスミ草を四角くカットして会場中にどよめきを生んだ経験がある。「カスミ草が好きじゃなかったから、カッティングしたら好きになるかな?と思って。四角だけじゃなくて、星型にしてみたり。ブーイングをもらった甲斐あってか、いまでは大好きな花になりましたよ(笑)」と、笑い話にできるのは、確固たる信念があるから。「自分の考える表現を見て、何を感じてもらえるかが大事」――そのためには、何だってする。失敗を恐れない。新しいことにも挑戦する。たとえ、周りに眉を顰められても。

 斬新な花結いは、ウエディング会場で露骨に嫌がられたこともあるという。しかし、一つひとつ丁寧に、新郎新婦の想いをカタチにしていくことに向き合ってきた結果、拒否されていたことが嘘のように、「花結師さんならいいですよ」と言ってもらえることも増えた。招く側としてゲストへの心配りを意識し、ウエディングらしい見せ方を心がける。「夢が叶いました」と感謝される度、自分のしてきたことは凄いことかもしれない、と密かに心を震わせる。それと同時に、自分の内から湧き出るものを発信するアーティストとしての活動にも力を注ぐ。近くは、6月中旬にスウェーデンの大学が持つ植物園で、パフォーマンスを行う予定だ。そこにある花を選んで、持ち込んだ着物に合わせて結う。また、花=女性という固定観念を払拭すべく、男性=花をどう格好よく表現するかにも挑戦している。「男性だけの写真を撮って、個展を開きたいですね。そこでパフォーマンスもできれば面白い」と、やりたいことは次々と出てくる(★1)。「花結い師」は彼が名付けて始めた活動だからこそ、後継者の育成も考え始めているという。10年一区切り。しかし、まだまだ彼の進む道は険しい。「10年後、20年後、全然違うことをしれいるかもしれませんが、いまはとにかく『花結い師』をもっとみんなに知って欲しいですね」。

 花結い師T A K A Y Aが世界中を飛び回り、人と花を、そして人と人を結ぶ日もそう遠くない。そして、多くの出会いと刺激にほんの少し疲れた彼が羽を休める場所は、この先もずっとここ京都なのだと思う。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

2010年、世界遺産の下鴨神社で行われたパフォーマンス「花衣華~秋に舞う蝶~」より。

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

2010年、長崎ハウステンボスのバラ祭でオープニングイベントを担当。花園でのパフォーマンスやパレードなど、大々的な花結いイベントが行われた。

 

★1
取材後、驚きの急展開で男性だけの作品展の開催が決定!
会場:ギャラリー ル・ベイン
期間:6月23日~29日 11:00~19:00
レセプションではパフォーマンスを披露予定。
※詳細は会場HPか花結い師TAKAYA公式HPをご覧ください。

京都拠点、その魅力とは。

 「東京に少し住むようになると、情報も多いし、速いし、仕事として成り立つことを実感しています。会いたい人にもすぐ会える場所です。だけど、住みたいとは思わない。京都は、都会すぎず田舎すぎない。そこが一番惹かれる点です。お寺やお庭をすぐ見に行けるのも魅力的。感性って、一所懸命見て勉強しないといけないというものではなく、町を歩くだけでそのバランスが入ってきて自然と身に付くもの。いつも意識してないものを意識して見るようになると、それが感性になっていく。そう考えると、京都は自然の勉強の場なんです。これから先も、どこへだって行くけど移住はしないと思いますよ(笑)」

プロフィール:
text:山田 涼子(やまだ りょうこ)
しがないモノ書きと二足の草鞋で、高校・専門学校の先生(国語科)も。様々な媒体での執筆はもちろん、テレビ番組のリサーチ、京都特集のコーディネートなども請け負う。慣れ親しんだ京都の魅力を再発見するため、ライター&イラストレーター仲間で「ことり会」を結成。自分たちの好きなものだけ詰め込んだ「ことり会だより」の編集長も務める。
「椿屋」http://tsubakiya.gozaru.jp/
「ことり会」http://kotorikai.com/

PROFILE

花結師 TAKAYA―Hanayuishi Takaya

花結い師 TAKAYA
―Hanayuishi Takaya

2004年より京都を拠点に「花結い師」としての活動を開始。生花で独創的なヘッドドレスを制作し話題を呼ぶ。人に花と衣をまとい華に開花するパフォーマンス「花衣華(かいか)」を国内外で開催し、活動の場を広げる。2010年、YUMI KATSURA GRAND COLLECTIONにて花結いを行い、以降もコレクションを担当。イギリス最大手新聞であるデイリー・テレグラフ紙をはじめ、オランダの有名雑誌や新聞など、海外メディアからも注目を集めている。企業やブランドとのコラボレーションによる作品制作の一方で、自ら制作する作品においては、人と花から受けるインスピレーションの表現や、即興による花結いを行う。また、ウエディング業界でも根強い人気を誇る。テレビ出演のオファーも多く、最近では堂本剛アルバム「Shamanippon-ロイノチノイ」で花結いを担当している。
花結い師 TAKAYA

RECOMEND

BACKNUMBER

CONTENTS

↑TOPへ戻る