青幻舎マガジン

古道具店店主 Soil 仲平誠

京都/拠点 : work & life in Kyoto
vol.16

時にアートであり、世界を知るツールでもあり。
「古道具を仕事にする」魅力とはいかに?
古道具店店主 Soil 仲平誠

 

 フィンランドを中心に、ドイツやフランスで買い付けたヴィンテージ雑貨や古道具を扱う店「Soil(ソイル)」。食器からおもちゃ、木片のようなガラクタまで、店主・仲平誠さんの目線で選ばれたモノたちは、種類は多彩ながら、どれも「デザインとしてカッコイイ」ものが揃うのが魅力。5周年を迎える今年は、5月末で現在の南禅寺での営業を終えて、今夏に浄土寺の長屋に移転オープンするべく準備中。一区切りついたこの時期に、仲平さんがあらためて感じる「古道具の魅力」について聞いてみた。たかが古道具、されど。時を経て、にぶい光を放つ道具たちは無性に美しく、現世にはないロマンを存分にかき立ててくれるのでした。

text:ヤマグチノリコ/photo:松村シナ

おこづかいで楽しめる、古道具のセレクトショップ

古道具店店主 Soil 仲平誠


 かつて都があった街・京都。宮大工から友禅職人まで、現在もいろいろな仕事がある中で、骨董商、古道具商もまた、京都に多い仕事のひとつであるように思う。その理由はいわずもがな、美しい工芸品や茶道具などが都に集まり、愛でられ、使い継がれ、同時に多くの目利きを育ててきたということ。

 ヨーロッパのヴィンテージ雑貨・古道具を扱う「Soil」の店主・仲平誠さんも、京都に育ち、高校生にして天神さん(毎月25日に北野天満宮で開催される骨董市)に通いはじめ、古いものの虜になった一人。聞けば、小学生の頃から、おこづかいで古切手を買っては『コロコロコミック』に貼ってカスタマイズをしたり(カワイイ!)、道ばたの石ころを拾っては、ニヤリと悦に入っていたらしい。

 学生時代は美大で油絵を学んだものの、卒業後はアンティーク商へ就職。意外な進路にも思えるが、「小さな頃から古いもの好き。迷いはありませんでした」。29歳の春に独立し、南禅寺にお店をオープン。骨董商出身といえども、自分のお金で買い付けるのは初めてのこと。海外の市や店を巡り、時に失敗を重ねながら腕を磨いてきた実践派。そんな仲平さんが語る古道具屋の魅力は、「子どもでも誰でも買えるものがあるところ。美術館のアートはカッコイイけど買えないし、デパートは高級志向で、いつでも買えるものではないでしょ? 自分のおこづかいで買えるものがあると思うだけで、ワクワクするし”モノを見る眼”が養われる気がするんです」。

古道具店店主 Soil 仲平誠


今回の撮影は、すべて移転前の南禅寺のお店にて。古い鎖や鉱石からグッドデザインな食器まで。木箱や古材を展示台に見立てるなど、ディスプレイのアイデアも素敵!

古いものの存在価値とは?

古道具店店主 Soil 仲平誠


 仲平さんが扱う古道具の価格は300円〜数万円まで。古いガラス瓶にティーカップ、天びんなど用途が分かるものから、土器のかけら、スペインの闘牛士人形、スコップのパーツ、錆びたペンチ、アフリカの祭器など用途不明なオブジェまで。特に最近は「素朴な民具、生活道具に惹かれます」と話すが、例えボロボロであっても、不思議とまとう空気は凛としているのがカッコイイ。

 古いものを扱う面白さのひとつを「自分で価値を決められること」と仲平さん。例えば小さな鍵や箱、子どもが描いた絵など。見る人次第ではゴミと化しそうなものの中にも、キラリと光る価値や美を見出し、すくい上げ次の時代へ伝えていく。もちろん拾い上げたからには、お店の主役に仕立て、丁寧に展示をして最高のプレゼンテーションをするのも忘れない。

 もう一つは、「サビや汚れなどの『経年変化』や、使い手の『手の跡』が残ることで生まれる、唯一無二の存在感」と話す。古いものが仲平さんの手に渡ってくるまでには、何人もの持ち主を経ていることが多い。その途中で壊れたり、ポイと捨てられることもあっただろう。それが使い手の愛情や偶然が重なって、海を渡り日本やってきたとは、なんてロマンティックなことだろう。「モノ」は凛として語らず。でも、修復の跡やサビた味わいから、異国の地で生まれたであろうストーリーがにじみ出てくるのが面白い。「さらにその存在感は、最高のアートやオブジェにもなるんです」。

古道具店店主 Soil 仲平誠

東欧のペンケース。角材をくり抜いて作ったもの。持ち手の名前もうっすら見える(撮影:仲平さん)。

古道具店店主 Soil 仲平誠

ヤマグチ私物のコースター。2年くらい前にSoilさんで購入。1000円くらいだったかな? 模様もサビ感もお気に入り。グラスはもちろん、デミタスカップも古伊万里のそば猪口にも映えるので、毎日のように愛用中。

5年目の新たな出発

 移転オープンを間近に控える今年、仲平さんにとってもうひとつ新しい挑戦があった。それは、発起人として、実行委員のひとりとして力を注いだ「第1回 京都ふるどうぐ市」。約1年間の準備を費やし、4月に元・立誠小学校で開催。全国から厳選した50店舗を招き、2日間で5000名の集客を達成! 見事なチームワークと細やかな運営で、お客さんからも出展者からも好評を集め、早くも第2回の呼び声も高い。

 ひと仕事を終えた今、あらためて古道具の楽しさを感じているという仲平さん。「この仕事を始めて、毎日の食事や暮らしにも気を使うようになりました」。美しい道具を観察していると、技術の乏しい時代でも、試行錯誤を重ねていいものを作ろうとした人々の努力がじわじわと垣間見え、自然と情が移るという。そんな素敵な道具を手にしたら「美味しい水を飲みたくなるし、美味しいごはんが食べたくなる!というわけです。自分でも意外な変化でしたね」と笑う。「小さな古道具でも、好きで続けることで広がる視野ってあるんだなと。この先もっと続けたら、もっと楽しいことに出会えるのかもしれない」。移転後の新店は長屋で、少し鬱蒼とした(?)ムーディーな雰囲気とのこと。新しい場でのスタートは、きっと新たな楽しみに満ちているに違いない。

古道具店店主 Soil 仲平誠

2014年4月26日〜27日に開催された「第1回 京都ふるどうぐ市」の様子。会場はレトロな元・立誠小学校。一時入場制限がかかるほどの盛況ぶりながら、運営もスムーズで、お客さんも出展者も笑顔の2日間となった。

 仲平流 古道具の楽しみ方

 最後はおまけ編。古道具に興味があっても、「何を買ったらいいか分からない」「使い方も分からない!」 なんて人もいるかも。そんな初心者さんにもおすすめの、仲平さん流の楽しみ方をご紹介。


1.壁に飾ってみる。

「存在感のある古道具は、思い切って壁に飾るのがおすすめ」と仲平さん。縄や鉄板のみならず、カゴや箱などの立体物も臆せずトライを。アート作品にも負けないオブジェが完成します!

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左:日本の古い縄(なぜか三つ編み)とドイツの鉄束。 中:日本製のテニスラケットをフレームに見立てて。中はアラビア語らしき手紙。右:フィンランドの洋服の型紙。もはやモダンアート!


2. コレクションしてみる。

切手収集しかり、スノードーム集めしかり。集めて・眺めて・比べることで、それぞれの個性がぐっと引き立つことも。

古道具店店主 Soil 仲平誠 古道具店店主 Soil 仲平誠

左は、北欧各地の木箱。100年以上前の北方民族のものも。右は、日本や韓国、北欧の鈴。「形や音の鳴り方がどれも違って、各地の職人さんの工夫の跡にぐっときます」。


3. 見立てを楽しむ。

古くは、茶人・千利休が漁師の魚籠を花入れに使ったように、噺家が扇子を筆に、手ぬぐいを手紙に見立てて落語を演じるように。「見立て」とは、物を本来のあるべき姿ではなく、別の用途として使い、新しい価値を見出す「遊びゴコロ」のこと。ガラクタをお盆に見立てるもよし、花器に見立てるもよし。使い手の想像力次第で楽しみが広がる。

古道具店店主 Soil 仲平誠 古道具店店主 Soil 仲平誠

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上左:ヨーロッパの古いゲームボードを飾り板に。上右:ブリキのカップを植木鉢に。下段:タイの瓦をお皿に見立てて(撮影:仲平さん)。


4.手を加えて、作品に。

仲平さんが今、夢中になっていることのひとつが、古道具に手を加えた作品づくり。ちょっと手を加えることで、洒落たオブジェに。今夏に移転オープンするお店では、以下のような楽しいオブジェが登場予定。

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上左:フランスの地球儀に、フィンランドのクリーム絞りを付けた「オリジナル地球儀」。背景は、宇宙に見立てたオルゴール盤。光が透けてコスモ感たっぷり!上右:古いボートのオブジェに脚をつけたもの。不思議な浮遊感が。下左:フィンランドのマッチ箱を小さな宝箱に。下右:時計のフレーム×海の写真×人形。どれも古いもの。なんだかシュール。


5. デザインを味わう。

絵柄やカタチの楽しさ、美しさにこだわるのも仲平さん流。中にはくすっと笑えるチャーミングな絵柄も。そんなグッドデザインは、あまり難しく考えず、直感で「カッコイイ」と思えるものを手にとってみて。愛でる楽しさもまた、古道具の魅力なのだから。

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上左:外側は星柄×中は植物柄のハコ。宝箱に。上右:カワイイ熊プリントの缶。キックボードって昔からあるんだ! 下段:堂々たる佇まいのフィンランドのポットは50年前のもの。ガラスのフタ、プラスチックの持ち手も面白し。(上記4点撮影:仲平さん)。

京都拠点、その魅力とは。

 「京都育ちの僕は、高校時代は天神さんが洋服屋代わり。アメカジやフランスの古着を買ったり、大学時代には友人と出店もしていました。街にも素敵な道具屋さんが多く、自然と古いものに感化されて育ってきたような気がしています。独立した今、自分が好きなものにこだわっていると、人もモノも、不思議といい出会いが増えてくるのが面白い。その縁を通じて、今年地元の京都で「第1回 京都ふるどうぐ市」を開催できました。大規模なイベントは東京中心になりがちだけど、京都や関西だって古道具屋もお客さんのレベルは負けていない。全国の勢いのあるお店を招くことで、みんなが刺激を受け合うよい機会になりました。ぜひ今後も開催して、街の人たちにも「古道具がある暮らしの楽しさ」を伝えていけたらいいですね」

プロフィール:
text:山口紀子(やまぐちのりこ)
ライター・編集者。新潟生まれ。
好奇心と向こう見ずな性格が高じ「日本の根っこ」を探るべく東京経由で京都へ。地域に根付く豊かな文化や手仕事を発掘すべく活動中。共著に『京都こっとうさんぽ』。
http://kyotosumu.jugem.jp/

Photo:松村シナ
SOHOでデザインの仕事をしながら、写真展などの創作活動中。2012年11月より「京都写真教室Tract」の講師も務めながら、日々写真の魅力を追求する。
「torico.」http://torico.petit.cc/
「Tract」http://www.tract-kyoto.com/

PROFILE

古道具店店主 Soil 仲平誠

仲平誠
なかひらまこと

北九州市生まれ、京都市育ち。京都造形芸術大学 美術工芸学科洋画コース(現・油画コース)出身。アンティーク商での下積みを経て、2010年南禅寺にヨーロッパのヴィンテージ雑貨・古道具店「Soil」を開店。2014年4月に初めて開催された「第1回 京都ふるどうぐ市」では実行委員を務め、見事大成功を収めた。2014年夏には、浄土寺の長屋に移転・リニューアルオープン予定。この日着用したお洒落な帽子は、ヴィンテージのフィンランドの学生帽!
http://www.soil-kyoto.com

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