MG まず「絵画の歴史」という書名について話しましょう。
“ルネサンス美術の歴史”でも“バロック美術史”でもない
「絵画の歴史(history of pictures)」なんて書名は初めてでしょう。
DH そうだろうが妥当なタイトルだよ。
この本では、写真や映画 テレビまで扱う。あらゆる種類の画像(picture)をね。
画像を作る諸芸術の関連性を指摘する本だよ。
画像について語るべきことはたくさんあるが、今まで十分に議論されてこなかった。
MG 画像は文字より古い言葉より古いかもしれません。
現存する最古の画像は約3万年前のものですが、(画像の)誕生はそれ以前です。
画像を制作する欲求は人間の本能なんですね。
DH 洞窟に暮らしていた原始の人間たちが最初に壁に描いたものは、動物だっただろう。
その様子を見ていた人は――鼻で笑ったかもしれないね。“それなら見たことがある”と
描かれたものを――「識別」したんだ。
最初の画像は何かに似たもの、何かの描写であったはずだ。
それは恐らく動物だっただろう"食料でも脅威でもある身近な存在だからね。
動物を描いたに違いない。それを見た人は――“これに似たものを見たことがある”と言った。
画像によって「見ること」を学んだんだ。
<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史
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