DH
カラヴァッジョがハリウッドの照明を発明した――これは本当のことだよ。
あんな光の表現は他では目にしない。
太陽の光を当てて描いたんだろう。
あれほど濃い影を作るのは強烈な光だけだ。
カラヴァッジョの絵画には濃い影がある。
これは太陽光を当てて描いたことを意味する。
鏡か何かで反射させて取り込んだんだろうね。
ハリウッドの照明は彼に学んだものだよ。参考になったはずだ。
細部まで計算された光の当て方だからね。
つまり――撮影技術というものは舞台芸術に通じるんだ。照明が欠かせない。
劇場には照明が必要だろ。写真撮影でも照明が重要だ。
その意味で写真は演劇的だと私は考えている。
MG 本の中に分かりやすい比較がありました。
《モナ・リザ》の隣にマレーネ・ディートリッヒ(ドイツ出身の女優・歌手)の写真を並べていましたね。
16世紀の絵画と20世紀の写真の照明が似通っているのが分かります。
DH 《モナ・リザ》は興味深い。《モナ・リザ》は絵画の大傑作だとみなされているが、
その一因は顔に描かれた繊細な陰影にあるだろう。
その陰影は見事なグラデーションになっている。
その20年前に描かれた作品より格段に繊細な階調だよ。
長い時間がかかっただろうね。あの陰影を描き出すのは大変な仕事だ。
《モナ・リザ》はそれまでにない陰影が描かれた絵画になった。
MG ソフトな影ですね。
DH 非常にソフトだ。陰影が徐々に明るくなっていく。
暗い部分から明るい部分へ見事なグラデーションだ。
描くには高度な技巧を要するよ。
<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史
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