<prev  top  next>

対談「絵画の歴史」 デイヴィッド・ホックニー×マーティン・ゲイフォード

3. カラヴァッジョがハリウッドの照明法を発明

※日本語字幕をオンにしてお楽しみください。

カラヴァッジョの強烈な光とハリウッドの照明

DH  カラヴァッジョがハリウッドの照明を発明した――これは本当のことだよ。
あんな光の表現は他では目にしない。
太陽の光を当てて描いたんだろう。
あれほど濃い影を作るのは強烈な光だけだ。
カラヴァッジョの絵画には濃い影がある。
これは太陽光を当てて描いたことを意味する。
鏡か何かで反射させて取り込んだんだろうね。
ハリウッドの照明は彼に学んだものだよ。参考になったはずだ。
細部まで計算された光の当て方だからね。

つまり――撮影技術というものは舞台芸術に通じるんだ。照明が欠かせない。
劇場には照明が必要だろ。写真撮影でも照明が重要だ。
その意味で写真は演劇的だと私は考えている。




《モナ・リザ》の繊細な陰影

MG 本の中に分かりやすい比較がありました。
《モナ・リザ》の隣にマレーネ・ディートリッヒ(ドイツ出身の女優・歌手)の写真を並べていましたね。
16世紀の絵画と20世紀の写真の照明が似通っているのが分かります。

DH 《モナ・リザ》は興味深い。《モナ・リザ》は絵画の大傑作だとみなされているが、
その一因は顔に描かれた繊細な陰影にあるだろう。
その陰影は見事なグラデーションになっている。
その20年前に描かれた作品より格段に繊細な階調だよ。
長い時間がかかっただろうね。あの陰影を描き出すのは大変な仕事だ。
《モナ・リザ》はそれまでにない陰影が描かれた絵画になった。

MG ソフトな影ですね。

DH 非常にソフトだ。陰影が徐々に明るくなっていく。
暗い部分から明るい部分へ見事なグラデーションだ。
描くには高度な技巧を要するよ。

次回――「舞台を描く 絵画を上演する」3月3日公開予定

<prev  top  next>


絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで

デイヴィッド・ホックニー&マーティン・ゲイフォード

翻訳 木下哲夫
図版310点掲載
判型:A4変
総頁:360頁
上製本
定価:本体5500円+税
ISBN 978-4-86152-587-2 C0070

<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史


copyright(c) 2017 Seigensha Art Publishing., Inc. All rights reserved.