MG “純粋な写真”とか“純粋な絵画”という神話がありますね。
しかし写真家は絵画を、画家は写真を参照した。
DH そのとおりだ。
MG あなたもカメラを使われた。
DH ドガもトリミングなどの技法を絵画に援用したね。
写真から学んだんだよ。
「今日 絵画は死んだ」と言ったのは誰だった? ポール・ドラロッシュか。
彼はフランス政府に向けて報告書を書いたんだ。ダゲレオタイプについてね。
その中でこう述べた。
「写真は現実を忠実に模倣する」
「今日 絵画は死んだ」
彼は絵画がどう変われるか予想できなかったんだね。
絵画は写真と競う必要はなかった。むしろ絵画は復興した。
MG 傑作の多くが1839年以降に描かれています。
写真を利用した絵画も、逆に避けた絵画もあります。
DH 意識的に違う道を探ったのが印象派の画家たちだね。
彼らは写真が苦手とするものを描いた。
“もや”のようなものは、長年 写真に写し取ることができなかった。
薄暗いところでは写真は撮れない。写真を撮るためには強い光が必要だった。
だから印象派の画家は“もや”を描き始めたんだ。
写真には写らないと知っていたからだよ。
これは興味深いことだと思うね。
<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史
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