『バラ図譜』は、1817年から1824年にかけて初版が発行されたバラだけの版画集です。作者のルドゥーテは「バラのレンブラント」とも謳われ、植物学的な正確さと高い芸術性から、本書は植物画の最高傑作と評されています。
収録されたバラの中には、種として絶滅し、ルドゥーテの絵の中だけで生き続けているものも。植物学的価値の高さはさることながら、かつて異国の庭に咲いていた美しいバラと画家の魂が、観る人の心をそっと震わせます。
ルドゥーテは、点描で銅版に原画を描き、輪郭線を用いずに点の集散で色の濃淡を表現しました。本書では、この繊細な美しさを原寸大でじっくり楽しめます。布貼りの豪華仕様で、インテリアとしても存在感を放つ一冊です。
「ケンティフォリア」とは「100枚の花弁を持つ」という意味。薄い花弁が重なり、外側から内側に向かって次第に色濃くなっていくさまは、ルドゥーテの繊細な彫版技法なくしては表現し得なかったでしょう。
野生種にも関わらず、栽培種に劣らぬ華やかさが目を引くバラ。「スルフレア」とは「硫黄」を意味し、大地の色を取り込んだ花ともいえます。『バラ図譜』には、黄色いバラが4点だけ収録されています。
鮮やかな花の色とおびただしいトゲが印象的なバラ。このアジア原産のバラの親には、日本でもおなじみの「ハマナス」が入っています。美しくも傷つきやすく、安易に人を寄せ付けない美少女のような風情です。
中国で生まれ、ヨーロッパへと運ばれた四季咲き性バラのひとつ。点描彫版法による繊細で美しい彩色はまさにルドゥーテの真骨頂といえます。絹のドレスのような花びらと瑞々しいグリーンの対比も魅力的です。
「花のラファエロ」または「バラのレンブラント」とも称されている植物画家で、植物学的にも芸術的な視点でもバラを語るには欠かせない人物です。
1759年にベルギーのサンチュベールにて、代々画家である家に誕生。幼い頃から父親のもとで絵画を習い、1782年にパリへ移住。フランス王妃マリー・アントワネットやナポレオン皇妃ジョゼフィーヌと出会い、激動の時代の中で宮廷画家として植物を描くことに情熱を注ぎました。
ルドゥーテは、銅版画による多色刷り印刷に手彩色を加えるという技法を用い、版画とは思えない緻密で美しい植物図譜を出版しました。代表作の『バラ図譜(Les Roses)』、『美花選(Choix Des Plus Belles Fleurs)』などに見られる作品の数々は、当時の貴族はもちろん、今もなお観る者の心を掴んで離さない、永遠の魅力を放っています。
「ルドゥーテ展~19世紀植物画の世界~」では、ルドゥーテの代表作の一つである『美花選』(1827-33年刊)を中心に、貴重な肉筆画を含む160余点を展覧します。繊細なタッチで描かれた、19世紀フランスボタニカルアートの世界をお楽しみください。
http://www.paramitamuseum.com/top.html
「宮廷画家ルドゥーテとバラの物語」では、『バラ図譜』(1817-24年刊)と肉筆画を含む170余点を中心に、植物画の正確さと芸術的豊かさを併せもつルドゥーテ作品の魅力を紹介します。展覧会と同名の書籍と併せて、ひとつひとつの作品に込められた圧倒的な美しさをご堪能ください。
http://www.city.oita.oita.jp/bunkasports/bunka/bijutsukan/
著:ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテ
判型:A3
頁数:178ページ
製本:上製・函入
定価:12,000円+税
ISBN 978-4-86152-760-9 C0071
著:中村美砂子(社団法人日本ルドゥーテ協会副代表理事)
判型:文庫判
頁数:304ページ
製本:並製
定価:1,500円+税
ISBN 978-4-86152-633-6 C0071