株式会社青幻舎Seigensha Art Publishing, Inc.
<京都本社>〒604-8136
京都市中京区三条通烏丸東入梅忠町9-1 大同生命ビル5F
TEL:075-252-6766FAX:075-252-6770
<東京支社>〒101-0054東京都千代田区神田錦町3-14-3 神田錦町ビル6F
TEL:03-6262-3420FAX:03-6262-3423
Copyright © Seigensha Art Publishing, Inc. All rights reserved.
ロートレック作品の最大の魅力は表現力豊かな線描にある。
類稀なる素描家であったロートレックは的確な線描で対象の姿を巧みに描き出し
ただけでなく効果的な誇張や省略によってその本質を鋭くとらえることができた。
南フランスの貴族の出身であったロートレックは生まれつき身体が弱く父親が
息子にも行うことを期待した狩猟や乗馬よりも絵を描くことに興味を抱いていた。
絵の勉強のためにパリに出たロートレックは歓楽街に出入りするようになり
やがてダンスホールやキャバレー娼館などに入り浸るようになる。
そこで出会った人々や目にしたことがそのまま彼の画題となっていく。
ロートレックの線描の魅力が最もよく表現されているのはリトグラフであろう。
ロートレックにとってリトグラフは油彩画にも劣らないほど重要な表現手段であった。彼の仕事の中でも極めて重要な位置づけにあるポスターは全てリトグラフで
制作されているし本の挿画や表紙膨大な数の版画もほとんどがリトグラフによ
るものだ。(中略)
巧みな線描によって描き出された19世紀末のパリに生きた人々の姿は眺めていて全く興趣の尽きることがない。
冨田章(サントリーミュージアム天保山学芸部長)-序文より抜粋-