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対談「絵画の歴史」 デイヴィッド・ホックニー×マーティン・ゲイフォード

5. 写真 真実 そして絵画

※日本語字幕をオンにしてお楽しみください。

MG “純粋な写真”とか“純粋な絵画”という神話がありますね。
しかし写真家は絵画を、画家は写真を参照した。

DH そのとおりだ。

MG あなたもカメラを使われた。

DH ドガもトリミングなどの技法を絵画に援用したね。
写真から学んだんだよ。
「今日 絵画は死んだ」と言ったのは誰だった? ポール・ドラロッシュか。
彼はフランス政府に向けて報告書を書いたんだ。ダゲレオタイプについてね。
その中でこう述べた。
「写真は現実を忠実に模倣する」
「今日 絵画は死んだ」
彼は絵画がどう変われるか予想できなかったんだね。
絵画は写真と競う必要はなかった。むしろ絵画は復興した。

MG 傑作の多くが1839年以降に描かれています。
写真を利用した絵画も、逆に避けた絵画もあります。

DH 意識的に違う道を探ったのが印象派の画家たちだね。
彼らは写真が苦手とするものを描いた。
“もや”のようなものは、長年 写真に写し取ることができなかった。
薄暗いところでは写真は撮れない。写真を撮るためには強い光が必要だった。
だから印象派の画家は“もや”を描き始めたんだ。
写真には写らないと知っていたからだよ。
これは興味深いことだと思うね。


次回――「テクノロジーの変遷」3月17日公開予定

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絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで

デイヴィッド・ホックニー&マーティン・ゲイフォード

翻訳 木下哲夫
図版310点掲載
判型:A4変
総頁:360頁
上製本
定価:本体5500円+税
ISBN 978-4-86152-587-2 C0070

<目次>
序 画像、美術、そして歴史
1 画像と現実
2 徴をつける
3 影とごまかし
4 時間と空間を描く
5 ブルネレスキの鏡とアルベルティの窓
6 鏡と映像
7 ルネサンス:自然主義と理想主義
8 紙、絵具、複製される画像
9 舞台を描く、絵画を上演する
10 カラヴァッジョとカメラのような目付きの男たち
11 フェルメールとレンブラント:手、レンズ、そして心
12 「理性の時代」の真実と美
13 1839年以前と以後のカメラ
14 写真、真実、そして絵画
15 写真を使う絵画、使わない絵画
16 スナップショットと動く映像
17 映画とスチル写真
18 終わりのない画像の歴史


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