国内外の手しごとを中心とした生活雑貨を扱う人気ウェブショップ「みんげいおくむら」の店主 奥村忍が、日本ではほとんど情報のない中国奥地の雲南省・貴州省に通い、現地の手仕事を追い求めた10年間の旅の記録を、在本彌生による鮮やかな写真とともに紹介した書籍『中国手仕事紀行』。
本書は2020年1月末に刊行したオリジナル版の内容に、新型コロナパンデミックによる中断を経て4年数ヶ月ぶりに再開した買い付けの旅について書いた新章を加えた、増補版。
新型コロナ以前の中国の様子を伝える資料としても、新型コロナ以後に起こった大きな変化を知ることができる意味でも、貴重な一冊です。
著者:奥村忍(文)/在本彌生(写真)
装丁:樋口裕馬
編集:石田エリ
判型:四六変型/総頁:328頁/定価:2,970円(本体2,700円)
ISBN 978-4-86152-982-5 C0026
国内外の手しごとを中心とした生活雑貨を扱う人気ウェブショップ「みんげいおくむら」の店主 奥村忍が、日本ではほとんど情報のない中国奥地の雲南省・貴州省に通い、現地の手仕事を追い求めた10年間の旅の記録を、在本彌生による鮮やかな写真とともに紹介した書籍『中国手仕事紀行』。
本書は2020年1月末に刊行したオリジナル版の内容に、新型コロナパンデミックによる中断を経て4年数ヶ月ぶりに再開した買い付けの旅について書いた新章を加えた、増補版。
新型コロナ以前の中国の様子を伝える資料としても、新型コロナ以後に起こった大きな変化を知ることができる意味でも、貴重な一冊です。
著者:奥村忍(文)/在本彌生(写真)
装丁:樋口裕馬
編集:石田エリ
判型:四六変型
総頁:328頁
定価:2,970円(本体2,700円)
ISBN 978-4-86152-982-5 C0026
凱里の町には、オート三輪が今日もわんさかといた。
四輪車では身動きが取りづらいような狭い路地を、満載の荷物にくわえタバコでク ラクション全開に走り抜けていく運転手もいれば、カラの荷台に何かを積みたいが、仕事が入ってこなきゃお手上げさ、とばかりにハンドルにもたれ掛かり路肩で昼寝 する運転手もいる。
二〇二四年春。四年数カ月ぶりに、その変わらない姿を見たら、『中国手仕事紀行』 が自分の中に帰ってきた。そう、この姿、この景色なんだ。
この本の初版が発売されたのは、二〇二〇年一月末。そう、まさに“謎の疫病” の発生源は中国であるらしいとニュースで流れ始めた時のことだった。疫病は瞬く 間に国境を越え、世界はみるみるうちに閉ざされていった。
まさかのタイミング。中国へ買い付けに行くこともできなくなり、いつ再開できる のかもわからない。途方に暮れていた僕をよそに、本書の初版は一年のうちに完売 してくれたのだった。
やっと中国への渡航が再開した二〇二三年も、渡航にはビザが必要となり、その手続きの煩雑さや加速する円安が、僕の腰を重くしていた。
しかしこれには思いがけぬ抜け道があった。中国の指定空港を経て第三国に出国する場合、最大一四四時間の滞在がビザなしで許されるというもので、僕は福建省の厦門経由でフィリピンのマニラへ行く旅程を組み、二〇二三年十月に四年弱ぶりの中国渡航を再開した。
ノービザ渡航は日数の制限に加え、移動範囲にも厳しい制限があった。久々に中国の空気を吸い、町を歩く。旅のリハビリには充分だったが、もっと自由に動きた
い気持ちが抑えきれなくなった。
そうしていよいよ二〇二四年、ビザ取得に踏み切り本格的に渡航を再開した。
いざパンデミック後の中国に戻ってみると、キャッシュレス決済が更に拡充されているなど、社会システムは事細かに変化していたのだが、その反面、本書に書いたことの多くはシステムが利便化されるほど、僕の目にはその輝きが増して見えた。
ありがたいことに、中国買付を本格的に再開し始めた矢先に増版のお話をいただき、パンデミック後の雲南・貴州の旅を新たな章として加筆した増補版をお届けで
きる運びとなった。二〇一九年までと二〇二四年の旅を読み比べ、そのコントラストを感じ取っていただけたら幸いです。
奥村忍(おくむら・しのぶ)
1980年千葉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、各国を放浪。のち商社、メーカー勤務を経て国内外の手仕事の生活道具を扱うWEBショップ『みんげい おくむら』を2010年にオープン。月の2/3は産地を巡る旅をしながら、手仕事・旅・食に関する執筆も手がける。
在本彌生(ありもと・やよい)
東京生まれ。大学卒業後外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真を撮り始める。2003年に初個展「綯い交ぜ」開催、2006年よりフリーランスフォトグラファーとして本格的に活動を開始、雑誌、書籍、展覧会で作品を発表。 衣食住にまつわる文化背景の中にある美を写真に収めるべく世界を奔走して いる。著書に、写真集『MAGICAL TRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ刊)、『わたしの獣たち』(青幻舎刊)、『熊を彫る人』(小学館刊)など。
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