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装飾文様は、時代の空気を反映しつつ、多様な展開を遂げてきました。東大寺の大仏に象徴されるように、蓮華文や火焔文など仏教にまつわるモチーフが渡来した飛鳥、奈良時代。青龍、朱雀、白虎、玄武など五行説の文様が正倉院を彩った天平時代。浄土を求める心が美しく詩的な唐草文や風景文を創出した平安後期。一転して鎌倉・足利時代には、武士階級が貴族的な規範を志向し、公卿の礼装である有職文様が重んじられました。更に、武士と町人、大和絵と浮世絵、能衣装と小袖など、相対する要素が融合して華麗な文様文化が花開いたのが、豊臣・江戸時代と言えるでしょう。
本書は古代から近代までを5つの時代に分けて文様を通観しました。歴史の動向と、人々の営みがかくも豊かな文様として結実したことに、あらためて驚きを覚えます。
解説:城一夫(共立女子大学教授)