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大観にとっての愛国とは、天皇を尊び自然を愛でることに他ならなかった。
画家としてできることは、「個」を表すこと以上に「国」を表すような作品を描くことだった。
昭和期に入って、富士、日の出、海、桜、鶴、松など日本的イメージに吉祥性をダブらせる画題を多く描くようになるのはそのためである。
ただし、重要なことはその先にある。
誰しもが描く陳腐とも言えるテーマを繰り返し描きながらも、誰でもない大観らしさがどの作品からも感じ取れるのは、大観がその造形的個性を発揮していたからである。
大正期とは異なる真面目さは、「彩管報国」(絵筆を執って国に報いる)という使命感からくるものだろうが、自然と人生に対する歓びを表す作品は、つねにゆったりとした大観スタイルを見せている。
古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)-序文より抜粋-