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木田安彦氏は版画彫刻絵画など多方面において華麗でユーモアに富む作品を量産し、私を驚かせた作家である。
そのような木田氏が一念発起し、西国三十三所の観音霊場を参拝し、その霊場を深く観察して制作したのがこの「木田安彦 西国三十三所」である。
この作品には今までの木田氏の作品にないものがある。それは「祈り」である。「祈り」は、人間の限界を悟り、わが身をはじめ多くの人々に幸福を与え給えと いう切なる願いなのである。「祈り」ほど深い宗教的感情はない。自らの病を癒すとともに万人に幸福を与え給えという木田氏の強い祈りの精神が、この作品に は込められている。
そしてこの作品には一つ一つの観音霊場の特徴が実に鋭く捉えられ、仏と、仏を礼拝する衆生と、背後の自然が一体となっている。仏はあたかも生きている人間のように微笑でいたり悲しんでいたりする。また背後の自然も、仏や衆生の願いに応じてさまざまな表情をみせるのである。
西国三十三所を題材にして作品を創った芸術家はいろいろあるが、木田氏ほど鋭く観音霊場の霊気を捉えながら、この霊場のもつ喜びや悲しみ、苦悩や笑いを表現した人はいない。
梅原猛(哲学者)-序文より抜粋-