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「APPEARANCE」は、歌う人のポートレート・シリーズである。 被写体のほとんどは、著者が現在暮らすカリフォルニアの サンフランシスコやオークランド周辺で出会った人々だ。 日常生活の中で知り合い、撮影を依頼し、被写体の自宅や指定された場所で、 彼らが歌いたい歌を歌い、世界と共鳴する瞬間を写真に留めている。 2002年にアメリカに移住した著者はこのシリーズが始まるまで、 外国人の自分が異国で写真を撮るには、超えなければいけないハードルがあるように感じ、 なかなか写真が撮られなかったという。 しかし、「歌う人」を撮りたいと思った時、
ここが外国だとか自分が外国人であるとかいうことはどうでもよくなり、 そこがどこであろうとも、誰かに出会い、話し、撮影するということが可能になった。 人は歌いながら感情を表現する。メロディは「過去」や「未来」への想いを喚起し、 リズムは身体を刺激し、様々な表情と身振りが被写体の上に現れ消えていく。 写真は感情という目に見えないものを写すことはできないが、常に変化する表情の一瞬を捉える。 著者はその特質を利用して、被写体の顔に不意に現れる、 感情の発露の瞬間を捉えようとシャッターを押している。 歌うという行為は普遍的で、歌う人には共通する何かがある。 著者が捉えた瞬間の表情が、世代や背景、性別や人種を越えて、 写真を見る人への共感を喚起するのだ。 * うたをうたうと、その人のいちばん楽しいところが口からふわーと出てくる…… 兼子裕代さんの写真を見ていると、そんな気がしてくる。 柴田元幸(翻訳家)
兼子裕代(かねこ・ひろよ) 1963年青森県青森市生まれ。1987年明治学院大学フランス文学科卒業。2005年サンフランシスコ・アート・インスティチュート大学院写真科卒業。現在カリフォルニア州オークランド在住。
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2023.6.7-6.30 | ギャラリー空蓮房
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新刊
重版
10月刊行予定
「APPEARANCE」は、歌う人のポートレート・シリーズである。
被写体のほとんどは、著者が現在暮らすカリフォルニアの
サンフランシスコやオークランド周辺で出会った人々だ。
日常生活の中で知り合い、撮影を依頼し、被写体の自宅や指定された場所で、
彼らが歌いたい歌を歌い、世界と共鳴する瞬間を写真に留めている。
2002年にアメリカに移住した著者はこのシリーズが始まるまで、
外国人の自分が異国で写真を撮るには、超えなければいけないハードルがあるように感じ、
なかなか写真が撮られなかったという。
しかし、「歌う人」を撮りたいと思った時、
ここが外国だとか自分が外国人であるとかいうことはどうでもよくなり、
そこがどこであろうとも、誰かに出会い、話し、撮影するということが可能になった。
人は歌いながら感情を表現する。メロディは「過去」や「未来」への想いを喚起し、
リズムは身体を刺激し、様々な表情と身振りが被写体の上に現れ消えていく。
写真は感情という目に見えないものを写すことはできないが、常に変化する表情の一瞬を捉える。
著者はその特質を利用して、被写体の顔に不意に現れる、
感情の発露の瞬間を捉えようとシャッターを押している。
歌うという行為は普遍的で、歌う人には共通する何かがある。
著者が捉えた瞬間の表情が、世代や背景、性別や人種を越えて、
写真を見る人への共感を喚起するのだ。
*
うたをうたうと、その人のいちばん楽しいところが口からふわーと出てくる……
兼子裕代さんの写真を見ていると、そんな気がしてくる。
柴田元幸(翻訳家)
兼子裕代(かねこ・ひろよ)
1963年青森県青森市生まれ。1987年明治学院大学フランス文学科卒業。2005年サンフランシスコ・アート・インスティチュート大学院写真科卒業。現在カリフォルニア州オークランド在住。