うさみみ パラパラブックス vol.6
「うさみみ」が天井から伸びたロープを引っ張ると、
部屋の扉がつぎつぎ開いて、回転しながら落下するという仕掛け。
ジェットコースターのような、スピード感あふれる画面は、
繰り返しパラパラするほどやみつきに!
もうひとつの研究所 著
うさみみ
パラパラブックス vol.6
□ 判型:各40mm×100mm(厚さ20mm)
□ 総頁:84頁
□ 並製 / スリーブケース入り
□ ISBN 978-4-86152-276-5 C0076
書 評
新文化 ―2011/8/25 掲載
フリップブックがアートになった! ―青幻舎「パラパラブックス」が人気
「フリップブック」とは、マンガやイラストが連続して描かれた小冊子。パラパラめくると視覚効果で、絵がアニメのようにひと続きに動いて見える。昔から雑誌の付録などでもおなじみの仕掛けだが、京都の青幻舎がこれを「パラパラブックス」としてシリーズ化。豊かなアイデアと高いアート性が人気を呼び、既刊8点で累計13万5000部に達している。生みの親の同社営業企画室・岩城智子さんに、経緯と魅力を語ってもらった。
(本紙・芦原真千子)
テントウムシのような丸い形の虫が、這い回るうちに突然赤くなってポンと爆発。跡には焼け焦げた穴が(『ばくだんむし』)。黒い怪人が眼からシュッシュッと白い光を発射し、最後に白い口を開けてニヤリ(『めからかいこうせん』)。かと思えば、近づいて来た黒猫がペロリと大きな舌を出して舐め、悠然ともと居た座布団に戻っていく(『猫のあいさつ』)。今年の東京国際ブックフェアで青幻舎のブースを賑わせていたのは、そんな面白フリップブック。 一見、カラフルなキャラメルの箱のようなつくりのシリーズ、「パラパラブックス」だ。既刊は8点。うち6点は、同社が本社をおく京都のアート作家「もうひとつの研究所」の、他の2点はイラストレーター・エッセイストの浅生ハルミンさんの作品である。
『私は猫ストーカー』(洋泉社)などの著作で知られる浅生さんに対して、ほとんど無名の存在の「もうひとつの研究所」とは? 実は男女ふたりのユニットで、手づくりのフリップブックを自費出版し、アートショップなどで販売していた。当時本社勤務だった岩城さんは、京の街で偶然その作品を見た。
その時の印象を岩城さんは、「うわ、すごいもの見つけちゃった!と思った」と振り返る。 「それまでにも海外のものなど見てはいましたが、こんなに完成度が高いフリップブックに出会ったのは初めてで、ほんまに驚いたんです」 アイデアのユニークさ、仕掛けの面白さ、そして絵を含めた独自の世界観に強く惹かれた岩城さんは、ぜひこれを商品化したいと考え、さっそく作者に連絡をとった。そして生まれたのが「パラパラブックス」である。だが商品化までには、紆余曲折もあった。
「一番難しかったのは、もひけん(「もうひとつの研究所」)さんが、創り上げた作品世界を壊さないようにしながら、商品として採算が合うものに仕立てることでした」とくにページのなかにたくさんの穴を穿ったり(『ばくだんむし』)、階段をしつらえたり(『階段のふり』)といった、手間とコストのかかるものは大変だった。穴の数を減らしたり、ストーリーをシンプルにして工程を削るなど、様ざまな調整や工夫を要した。
初回刊行は09年11月で、『客の多い穴』『めからかいこうせん』『ばくだんむし』『階段のふり』の4点を同時発売した。40㎜×100㎜の横長の判型で厚紙巻き。各84ページ。価格は前者2点が本体1000円、作るのに手間がかかった後者2点が、同1200円。 各巻に登場するのは、可愛いというのともちょっと違う、でもどこかキュートでユーモラスで不思議なキャラクターたち。
それが紙のページのなかで、まるでアニメのように滑らかな動きをみせる。ページをめくる一瞬の間のエンターテインメントだが、そこに何ともいえないおかしさや、造型的な魅力が凝縮されている。
発売がクリスマス前だったため、第1弾は目先の変わったプレゼントとして人気を呼んだ。陳列用に特製ボックスを用意したのも、販売上効果的だった。2タイトル各12冊がきっちり収まるボックスは、コンパクトでメルヘン調だったことから、店頭のクリスマスツリーの下やレジ回りなど、目立つ場所に置いてもらえた。発売直前に東京支社に異動になった岩城さんは、精力的に首都圏の書店回りを続けたが、設営した途端に売れるので、「書店さんにも喜ばれている」と感じたという。
年明けの2月には、情報番組「スッキリ!!」で、テリー伊藤氏が「こんな面白いモノがあるよ」と紹介。また「花まるマーケット」にも取り上げられ、一気に知名度がアップ。初版各5000部で、2カ月間で2度重版した。「初めは女性が大半だったけれど、テレビに出てからは幅広い年代・立場の方が買うてくれはって…意外に多かったのが年輩の男性。六本木界隈のお店では、外国人にも人気だったみたいです」この好調ぶりで「パラパラブックス」はシリーズ化が決まる。1年後の2010年11月に〝もひけんさん〟作の新刊、『歓迎の多い村』『うさみみ』(本体各1000円)を発売。この時岩城さんは、初回よりインパクトが落ちるのではと心配したというが、それは杞憂に終わった。2点とも快調な動きを見せたばかりか、既刊の動きも連動して再びよくなった。 この頃から「パラパラブックス」に、他のアーティストからも企画が持ち込まれるようになった。「色んな持ち味の作品があってもいいのでは」という社内の声を受けて第3弾として制作し、今年の5月に刊行したのが、浅生さんの『猫のあいさつ』と『クルクルパーマネントガール』(本体各1000円)。浅生さんの起用について岩城さんは、映画版「私は猫ストーカー」のエンドロールの猫のイラストが、「パラパラブックス」にぴったりだったからという。とくに『猫のあいさつ』は、世の猫好きにウケて現在2刷、1万5000部。テーマとアイデア次第で、様ざまな作家の作品をシリーズに入れられるという手応えを掴んだ。「アニメは作り手側のペースで見るわけだけど、 フリップブックは自分のペースで動きが楽しめる。
パラパラめくると風が起きたり、紙の質感とか感触とか、そんなところが何ともいえない魅力なんですよね」とその魅力を熱く語る岩城さん。 雑貨やおもちゃの要素もあるため、書店以外のショップからも引合いがある。だが違う業界の人から「バラして付箋にしてみたら?」などといった提案を受けると、「いやァ違うやん、これは本。まるごと1冊で完成された世界を作ってる本なんよ」という確信が、かえって強まると笑う。だからこそ、フリップブックというジャンルにこだわり、アートの域に達する作品を生みだしてきたアーティスト、「もうひとつの研究所」を大事にしたいのだ、とも。今年のクリスマス前には、現在制作中だという〝もひけんさん〟作、アッと驚くような仕掛けを施した「パラパラブックス」の新刊が、再び書店の店頭を賑わすことになりそうだ。
(掲載文より抜粋)


