| 京都在住の私にとって大阪は近くて遠い街である。出かけるのは月にいちどあるかないか。しかもたいてい、用事を済ませてしまえば寄り道するでもなく帰路についてしまう。京阪電車の特急で五十分、この、いつでも行けるという近さのために、あらためて大阪を遊ぼうという気になれないでいたのだが、本書をめくるうちにその思いもあらためられた。 東京を凌ぐ世界の商都して、大阪が「大大阪」と呼び習わされたのは大正末から昭和十年代。その、モダンシティ大阪を彩った建築たちを中心に、近代以降の西洋建築が紹介されるこのガイドブックと共に、大阪の街を歩いてみたい。(中略) 本書は、2004年の旧三井住友銀行船場支店の解体をきっかけに、「消えゆく近代建築に意義申し立て」、「大大阪の近代建築の再活用を大阪の街づくりの基盤」としようという「大オオサカまち基盤」というグループのメンバーが中心となって編まれた。グループはこれまで、数々の調査やシンポジウム、イベントの開催を遂げてきており、その活動をざっと見渡しただけでも、大阪人がうらやましくなってくる。 本書の監修をとつとめ、近代化遺産が取り沙汰されるようになった九十年代に先駆け、街と建築をめぐる「大阪の近代」を追いかけてきた橋爪伸也氏は、このグループの「ご意見番」でもある。(中略) かたちのあるものを壊し、新しいものを拵えてゆくことばかりでは、都市はいつまでたっても成熟しないと、みんなもうとうに気づいているではないか。 http://booklog.kinokuniya.co.jp/ ―2007年10月26日(金) 文筆家・ 近代ナリコ 書評空間より |